アメリカの人事評定 (4/24/2004)

 

 アメリカの会社の人事評定に関して私は偏見をもっていた.評価はすべて成果主義であり,とにかく結果がすべて.どれだけがんばろうが,献身的に働こうが,ポジティブな成果に結びつかなければ意味がない.そうやって厳しい競争を勝ち抜いた人だけが成功する.漠然とそんなイメージがあった.でも考えてみると,特に医薬品の研究なんて基本的に失敗の連続,成功することすなわち新薬を上市すること自体,奇跡に近いのである.もちろんそれ以前に,新しいバイオベンチャーを起こせるほどの発明をしたり基本技術を開発したりするのも十分大変なことである.この段階は大学で行われることが多いが,しかしいったん会社を起こし,従業員を集め,ある程度発展した後の段階で,いつもそんな基準で人を評価していたら誰も評価できないということにもなりかねない.研究開発が一筋縄でいかないのは洋の東西を問わない.そして気の合う相手と仕事がしたいのも同じ.ではどうなるのか.やはり日ごろからの人間関係が重要になってくる.

 通常年に一度,performance reviewあるいはfocal evaluationと呼ばれるプロセスがある.これがいわゆる人事評定のことだ.細かい点は会社により異なると思うが,まず評定のためのフォーム(書式)に,部下の当該年度の仕事ぶり(performance)について細かく記入する.同様にして上司が部下から評価される場合もあるし,自己申告する場合もある.研究職の場合それらをもとにまずRAResearch Associate)を部下にもつサイエンティスト以上の人が一堂に会して,各自のRAの評定(rating)を申告する.素晴らしい,並,要努力といった感じの3段階であることが多いようだ.これはボーナス(制度がある場合)に反映される.十分な根拠があると考えられる場合は,その理由を説明するとともに昇進(promotion)が提案される.サイエンティストの評定は,サイエンティストを部下にもつ人々が集まり,同様に行う.こうして階層ごとにミーティングがあり,最終的には経営陣が全体を調整し,Board of Directors(社外取締役会のようなもの)の承認を経て評定が決定する.その後上長と部下で11の面談を行って,各自の評価が伝えられる.もちろん社員が少ないスタートアップの場合はもっとシンプルだ.要するに細部は違っても大枠では日本の会社と変わらない.ただ給料が年俸で議論されることから,毎年プロ野球選手のような個人単位の契約更改交渉がくり広げられているのではと思われがちだが,筆者が知る限りそれほど派手ではないようだ.

 各自の評価は基本的に達成事項(achievements)に基づいて行うということになってはいるが,それだけでは現実的でない場合もある.筆者も以前RAの評定ミーティングに参加したのだが,補助職であるRAの評価は特にそうである.もちろん具体的な実績をもとに話す人もいるが,実際の議論のなかでは彼/彼女は非常にがんばる,長時間働く,献身的に働く,職場の雰囲気作りに貢献しているなど,感情的なコメントも意外と多いのにちょっと驚いた.結果には運もあるし,基本的にがんばっている人に報いてあげたいのはどこでも一緒なのだなと感じた次第である.

 

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