博士号(Ph.D.)について(6/27/2004)

 

 アメリカでバイオインダストリーの研究職として働く場合,Ph.D.の有無は非常に重要なファクターとなる.この点,日本とは根本的に異なる.研究員はサイエンティスト(Scientist)と呼ばれ,これには原則として博士号が必須である.一方学士(B.S.またはB.A.)や修士(M.S.)の場合は研究補助員(Research AssociateRA)ということになる.例外もないわけではないがRAは基本的に何年キャリアを積んでもRAで,サイエンティストになりたければ大学院に入り直してPh.D.を取得する必要があるし,実際そうする人も多い.良し悪しは別として,それが現実である.

 例え修士卒であってもRAは実験のデザインなどをすることはなく,あくまでもサイエンティストの指示の下で働くのが基本である.企業の研究所のRAは研究員とは見なされないのである.したがってPh.D.取得者の数も多くなるし,だからといって必ずしも優秀とは限らないのだが,アメリカではPh.D.が研究者であるためのライセンスのようなものと言える.ちなみに大学の研究者の場合RAは違う意味になって,日本での助手または講師に相当するようだ.

 さらにPh.D.取得者は,通常ポスドクとして他大学の研究室で数年修行することが多い.これは企業に就職する際の必須条件ではないが,慣習としてかなりの割合の学位取得者がこれをする.日本ではPh.D.のことを揶揄気味に「足の裏についた米粒」などと言ったりする.取らないと落ち着かないが,取っても食えないという意味である.アメリカではポスドク経験がこれに近いような気がする.レジュメにポスドク経験の記載がないと,場合によってはサイエンティストとして採用してもらえず,企業においてさえポスドクという肩書きでスタートしなければならないこともある.何が違うかと言うと,驚くべきことにポスドクとサイエンティストでは給料が倍近くも違うのだ.さらにポスドクは正社員ではないので,基本的に福利厚生面での恩恵も受けられない.

  またアメリカ企業の求人は,最初に実務経験の年数を問う場合が多い.学士または修士取得後3年以上とか,博士号取得後57年といった具合である.その際ポスドク経験は実務としてカウントされない場合が多いので,企業で働くつもりならできるだけ早く企業でのキャリアをスタートした方がいいようにも思えるのだが,ポスドク中にいい人脈を作るという機会もあるし,いい研究室で修行すれば,それによって得られるものは目先のお金には換えられないこともあるだろう.詰まるところどう考えるかは個人の問題になる.

 

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