どっちを見るか (12/9/2005)

 

リスクとベネフィット、Pros and consというように、物事だいたい両面ある。Upside and downsideともいう。

アメリカのベンチャーで働いていてつくづく驚かされるのが、とにかくいい方すなわちupsideに集中すること。いわゆるdownsideの方はできる限り見ないようにする。

どちらがいいとか悪いとかは一概に言えないが、日本人は世界一悲観的な国民だという調査結果を見たことがあるし、だいたいにおいて問題点、すなわちいい面よりも悪い面の方を先に考える。その底流には、うまくいかないと後でその決断をプッシュした人が非難されるため、そんな目にあいたくないという心理がある。要するに責任を取りたくない。したがって、石橋をたたいて渡るというスタンスになりがちだ。無理に進めて臨床で問題が起これば、当然責任者は厳しい状況にさらされる。一方、問題点を指摘して臨床以前にプロジェクトを中止した場合、それが本当はちゃんとした薬になるものだったかどうかは永遠に証明されないので、致命的な非難を浴びることがない。

アメリカの場合、結果がどうあれ自分を正当化する議論が得意な人が多いし、だめだったときのリスクよりもうまくいったときのリターンをより重視するのかも知れない。さらには動物モデルでいくら試したところでヒトでそうかはやってみなきゃわからないという開き直りがより大きいのと、もちろん対象疾患にもよるけれど、費用的に動物実験を積み重ねるのと小規模な臨床試験をやるのと対して変わらない場合もあるらしい。

医薬品の研究開発において、このスタンスの違いは本当に大きい。
完璧主義の日本は、ちょっとでも問題があると腰が引けてしまって、なかなか勇気を出して開発を進めることができない。そういう常識の中で育った私がアメリカを見ていると、おいおいこれで本当に行っちゃうの?という感じで物事が進んでいく。医薬品の候補化合物が、臨床へ行くまでののバリアが全然違う気がする。

現在私が働いている会社の場合は局所投与剤(要するに塗り薬)に特化しているので、全身投与の薬と比べても、なおさら極端なのかも知れない。同じような仕事をして同じようなデータを持っていても、前を向くか後ろを向くかは、考え方あるいは解釈次第でその後の方向性が180度変わってくるし、良きにつけ悪しきにつけ物事が進むスピードがまったく変わってくる。

これは薬の開発だけの問題ではないかも知れないですけど。

 

続き

Indexへ

Topへ