住むところと学校(1)

 

アメリカの会社で働くためのH1-Bビザが無事取得できて、20018月、家族も連れて渡米した。新しい土地で本格的な生活を始めるにあたって最初に決めなければならないことの一つは、当然ながら「どこに住むか」である。これはアメリカでは日本以上に重要な問題だ。一口にシリコンバレーあるいはベイエリアと言っても、その中の市や町によって、治安、人種構成、教育水準、住居費等が大きく異なるからである。つまりこれらの要素を総合的に検討して判断することになる。

大雑把に言って、シリコンバレーの治安は非常によい。殺人事件等、凶悪犯罪の件数がここ数年ゼロという町も多い。治安がよくないと言われるエリアも多少あるが、そういうエリアにさえ立ち入らなければ、現実的にいきなり事件に巻き込まれる確率は、現在の日本の大部分の地域よりも低いのではないかとさえ感じる。ただし日本と比べて安全に見えるのは、社会のシステムと個々の住人の防犯意識が高いせいもあるだろう。例えば小学校低学年の子供を一人で徒歩通学させたり、大人といえども酔っ払って深夜の路上で寝そべっていたりすれば何事も起こらないとは 言い切れない。当たり前だが油断は禁物である。日本で生まれ育った日本人としては、不便を感じることが全くないとは言わないが、こちらの基本に則って暮らすことで得られる開放感と安心感は、基本的にどこにでも存在する程度のリスクを補って余りある。町並みも美しいところが多く、要するに大変暮らしやすい。

 

シリコンバレーはまた、アメリカが多民族国家であることを実感できるところでもある。そして人種の割合は町によって、さらには同じ町の中でもエリアによって大きく変化する。白人、ヒスパニック(主にメキシコ系)、アジア系が大部分を占めるが、それぞれが多い場所と少ない場所がある。それは各地域の学校の生徒の人種構成にも反映され、場所によっては例えば全校生徒の80%以上をアジア系で占める小学校もあったりする。学校ごとの児童の人種構成や、SATと呼ばれる一種の共通テスト結果等のデータは公開されている。そして公立の学校であっても、教育水準は各学校の立地条件によって大きく異なったものになる。

まれに例外もあるが、 公立の場合小学校から高校まで、どの学校に行くかは通常住んでいる場所(住所)で決まる。従って子供をある学校に行かせたいと思ったら、その学校の学区(school district)に住まなければならないのだ。日本の公立校と異なり、いろいろな意味で学校間の差が大きいので、子供がいて公立に入れようと考えている場合は、「どこに住むか」よりも先に「どの学校に入れるか」を考える必要がある。もちろん私立の場合はこの限りではない。ちなみにアメリカでは高校までが義務教育とされ、公立に行く分には授業料はかからない。

 

ここでもう一つの大きな問題は、シリコンバレーの住居費の高さである。90年代後半のシリコンバレーの急激な発達と共に、住宅価格がバブル期の東京と同じように急騰して、今もなおニューヨークと米国のトップを争っているほどだ。大都会のニューヨークと違って、シリコンバレーはのどかな田舎町であるにも関わらず。

大雑把に言って、治安がよく学校の評判もよく住みやすそうなところは住居費も高いという一般則が成り立つ。学校については何を重視するかで選択も変わってくるが、要するに一家の収入によって住むところが分かれると言ってもよい。 

長男がちょうど小学校1年生になろうとしていた我が家が選んだのは、シリコンバレーのほぼ中央に位置するSunnyvaleという町の とある小学校だった。この学校は白人、ヒスパニック、アジア人がそれぞれ約30%という人種構成で、永住を想定していたこともあり、そのバランスがいいのではないかと考えた。 

 

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