もやもや病 診断後の展開

 10月29日(金)の夕方、診断に引き続きスタンフォード病院のDr. Steinbergの診察室で、今後の治療について相談。Dr. Steinbergの実績については事前にウェブで調べてあり、脳梗塞やもやもや病についての経験豊富なエキスパートであること、また私たちが希望するSTA-MCAとよばれる直接吻合術 (下記参照)を中心に手術を行なわれてきていることなどから、最初からここで手術をしてもらうつもりでいましたが、決める前に一応いくつか質問してみることにしました。

Q:こたの場合も手術が一番?

A:Yes

Q:これまで実際にどれくらいの症例数を?

A:過去20年間に240例ほどの手術を行って、そのうち約3分の1が子供。

Q:失敗はどの程度?

A:ほとんどない。まれに手術後に脳梗塞を起こしてしまった例があったけれども、成功率という点では97%かそれ以上ではないか。とりわけ子供の症例に関しては、基本的に失敗というものはない。

Q:もやもや病が日本で多く認められることから日本に専門家が多く、また我々が日本人であることから、日本で治療した方がいいということは?

A:もちろんあなた方がそう希望するのであればそれでも構わない。ただ学会等で日本の先生方ともよくお会いするが、私ほどの数をこなしているドクターは日本と言えどもそう多くはないのではないか。

Q:手術の日に入院するの?

A:Yes

Q:手術後どのくらい入院するの?

A:だいたい3,4日で退院できる

Q:学校復帰は?

A:1週間程度で行けるだろう

Q:スポーツはいつから?

A:通常術後3週間くらいから始められる

 といった感じで、文字にするとえらそうなお医者さんの典型的なコメントみたいに見えますが、実際には大変柔らかな物腰で丁寧にお話ししてくださり、やはり予定通りこの先生にお願いしようと思いました。こたは大人への対応が あまり得意ではないのですが、この先生の印象は悪くないように見えました。そこで妻と目で確認して、ここでの手術をおねがいしますと伝えました。 もやもや病のもとになっている狭窄した動脈は頭の左右(耳の近く)を通っています。この領域周辺を左右とも処置するために、手術は通常2回に分けて行われます。 ドクターは、ついていたナースといっしょにすぐに日程の検討を開始して、その場でとりあえずの手術の日程を決めてくれました。しかも1回目は2週間後(!)の11月12日(金)、2回目はさらに1週間後の19日(金)です。その翌週がThanksgiving休暇で、学校も5連休になるのでちょうどよいということもありました。で、その前に翌週アンギオとSPECT検査をするけれども、その日程については来週前半に連絡するとのこと。たった1回の来院、しかも2時間もしないうちにそこまで決まってしまったことに正直驚きましたが、診断が確かな以上、早いに越したことはありません。その晩から 東海岸のワシントンDCへ出張予定が入っていたのですが、予定通り出発することができました。

 翌週11月2日(火)、ワシントンDCでカリフォルニアに帰るための飛行機を待っていたところ、スタンフォード病院から携帯に連絡があり、翌3日(水)にアンギオをし、その後4日(木)、5日(金)の2日間でSPECT検査をするとのこと。わぁほんとに急だ。乗り継ぎ空港までの間にさらにメッセージが入っていて、2回目の手術の日程を、手術室の都合で当初の19日(金)から24日(火)にしたいがいいかとのこと。翌25日(木)がThanksgiving Dayで、手術をして連休に入るという感じになるのでこちらは何も依存はないけれど、病院の方がそれでいいのならばということでOK。あれこれ送る書類があるとのことなので、会社宛にFAXしてもらい、帰りがけに会社に寄ってピックアップ。同時に(既に誰もいなかったので)上司と部署のみんなにメールで事の成り行きを説明。明日から必要に応じて休みを取る旨を伝えておきました。ちなみに 筆者(こた父)は、シリコンバレーのバイオ系スタートアップベンチャーで働いています。スタートアップ企業の場合、大企業と比べると福利厚生はあまり充実しているとは言えませんが、有給休暇は通常年間20日程度はあります。今回のような事情である程度会社を休むにあたっては、アメリカの社会 には家族の医療問題は最優先という基本的なコンセンサスがあるので、非常に理解を得やすいです。また1日休まないまでも半日くらい必要な場合は、その旨口頭で伝えておくだけで(というか実際にはそれすら必要ないくらい)、フレキシブルに仕事ができるので助かります。

 飛行機での移動中、こたの小学校の校長と担任の先生に事情を説明する手紙を書きました。先日来、診察やMRIで早退を繰り返していたので、ある程度はわかってもらっていますが、最終的な診断と今後の検査および治療の予定が決まり、どれくらい休む必要があるかもだいたいわかったので、あらためて説明しておいた方がいいと思ったからです。

子供のもやもや病の手術治療は、虚血になりがちな領域への血流を増加させる目的で行われます。大きく分けて直接吻合(いわゆる血管バイパス術で、近くの動脈と疾患部分の血管とを直接つなぐ)と間接吻合(近くの健常な組織や筋肉を持ってきて疾患部分に乗せることにより、その後の自然な血管新生を促す)と呼ばれる2種類がありますが、それぞれに一長一短があり、どちらがいいというはっきりした結論は出ていないようです。こたの場合は手足の脱力発作(一般的には一過性脳虚血発作またはTransient Ischemic Attack; TIA と呼ばれ、脱力以外にも頭痛、吐き気、言語、学習障害等の場合もあります)の頻度がだんだん上がってきて、しかも発作の内容が悪化してきているように見えたので、手術後すぐに血流の増加が期待できる直接吻合が望ましいと、素人考えながら両親は判断しました。またスタンフォードで治療を受けたもうひとつの理由は、こたのアメリカ生活がすでに3年以上経っていて、 うらやましいことに英語でのコミュニケーションにほぼ問題がなくなっていたこともあります。もうひとつ、私たちが雇用主経由で加入している医療保険がスタンフォード病院をカバーしていることも大事な点です。アメリカの医療保険は日本と比べると非常に複雑で、この点をいちいち確認する必要があるのです。これらを総合し、さらに飛行機での長旅によるリスクや、日本での住所も保険もないこと、日本に行くにしてもどこの病院に行くか、そしてどこに泊まるか、またこたの妹(6歳)の学校といった問題を考えると、自宅のすぐ近所に西海岸一とも言われる立派な施設があり、しかも経験豊富なもやもや病の専門医がいるというのに、そこに行かない理由はありませんでした。

続き

もやもや病topへ