もやもや病 プロローグ

 2001年、こたが6歳のある日、突然「左手の力が入らない」と言いました。彼はそのしばらく前に、公園の遊具から地面に落ちた際、左手首を骨折していたので、最初はその影響だろうと思いました。とりあえずそれは数分で直りました。ところがしばらくすると、今度は「右手の力が入らない」ということがありました。これも数分で消えたのですが、それなら骨折のせいではないだろうけど、でも何だろう?という程度で、その時はあまり深刻には考えませんでした。

 こたは4歳の頃からサッカーをしています。取り立てて才能があるというわけではありませんが、6歳でアメリカに来てからも、市のリーグなどに参加しています。当然のことながら、歳を重ねるごとに フィールドも広くなり、走る距離も増えていきます。そのうちに、こたはだんだん疲れやすくなり、たまにではありますが、試合でたくさん走ったりすると、手だけではなく足の力が抜けることも起こるようになりました。それでも 私たち両親は、「何なんだろう?」と思うだけでした。

 2003年クリスマス、8歳の時にLAのディズニーランドに遊びに行きました。新しくできたカリフォルニアアドベンチャーの激しく揺れる観覧車に乗った後、足の力が抜けて歩けなくなり、ベンチにへたり込みました。この時も何だかおかしいと思ったものの、症状が数分で回復 したことからそれっきりにしていました。それ以来、手や足の力が入らないということが何度かあったように思います。

 2004年、9歳の9月、学校で休み時間に足の力が抜け、転んでしまったという日がありました。翌10月10日、野球の練習があって、バッティングをした後の守備練習中、突然芝生に倒れました。その時私 (こた父)は少し離れた所から見ていました。こたはその後立ち上がりましたが、足がふらふらして立っていられず、再び芝生に倒れこみました。本人もややパニックになっていましたが、意識はしっかりしていて、とにかく足が言うことを聞かないという感じでした。このシーンを目撃して、さすがにこれはおかしすぎると思い、その晩からインターネットで 、「足の力が抜ける」とか「脱力」とかいった思いつくままのキーワードであれこれ検索を始めました。その結果、もやもや病関連の いくつかのサイトに行き当たり、こたの症状はこの病気の典型的な症状 にとても似ていると思いました。「もしかしたらこたはもやもや病なのではないか」、との疑念が大きくなりました 。この病気は、脳に血液を送り込む動脈の一部が狭窄しているためにその先の部分への血液供給が足りなくなり、それを補うためにその先の細い血管が異常な形で発達したもので、正常ならば目に見えないはずの細さの無数の血管が無理な血液供給のために太くなって、画像診断ではその無数の細い血管があたかもたばこの煙がもやもやとしているイメージのように観察されるため、その名前がつきました。子供の場合、さまざまなきっかけによってその部分への血流が不足し、一過性虚血発作(Transient Ischemic Attack; TIA)を引き起こすのが特徴です。軽い脳梗塞のようなものです。大人の場合は逆にこの部分で脳出血を起こすケースが多くなるようです。同時にかかりつけの小児科医に相談したところ、よくはわからないが、それは一度神経科で見てもらった方がいいでしょうとのことで、小児神経科医を3名ほど紹介してもらいました。これは 大変よいアドバイスでした。

 2004年10月12日に診療の予約を取るべく電話したのですが、最初の二人の先生は当面いっぱいで、28日か29日にならないと診られないとのことでした。いくら至急診てもらいたいと訴えてもだめでした。3人目の先生は、明日なら空いてるよとのことだったので、これに飛びつきました。その後の経過を考えると、結果的には大変いい先生に当たったと思っています。 

 10月13日午後、早速診察に向かいました。これまでの経緯と症状を説明したところ、その先生の見立てとしては、おそらく精神的、あるいは感情的なものでしょうとのことでした。こちらはもやもや病を疑っていましたので、その可能性について聞いてみました。さらにこの病気はMRIで診断がつく場合が多いので、ぜひMRIを とっていただくようお願いしました。当初の反応は、これは非常にレアな病気 だし、私は違うと思うとのコメントでした。ただあなたがたがそう思われるのなら、また症状的にももやもや病を完全に否定できるわけではないので、とりあえずMRIはとりましょうということになりました。 この先生に、保険会社にMRI検査をカバーしてくれるよう交渉していただき、その後10月28日にMRIのアポイントメントを取ることができました。

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