Cafe 101

Bioテクノロジージャーナル 2006年5,6月号

 

産学での金銭感覚

 

A「大学は学術雑誌とか何でもそろっていていいよね」

K「会社にはあまりないのですか?」

A「大きな会社なら大概何でもそろっているけど、小さなベンチャーだとそういうわけにはいかなくて。うちも4年目になる今年からようやく、少しずつ雑誌の購読を開始したところだよ」

K「今まではどうしていたのですか?

A「検索結果から個々の論文ベースで購入したり、個人の購読に依存していたり。スタンフォードの化学科の図書館はありがたいことに一般にも開放されているので、ずいぶんお世話になっています(笑)」

K「でもそれではかなり不便でしょうね」

A「雑誌に限らず、スタートアップ企業では結構いたるところで不便を感じながら仕事をしなければならない。たとえば我々のようなケミストにとって必須とも言える化学構造式の描画ソフトウェアがあるのだけど、決して高いものでもないのに、買ってもらうまでに何ヶ月もかかったりしたこともあるし」

K「それじゃ仕事自体にも差し支えるんじゃないですか?」

A「でも最近、そういったことを何とかやりくりしながら進めていくのが、正しいスタートアップのあり方なのではないかと思うようになってきた。今の会社に入る前に、他のスタートアップにも何社か面接に行ったんだけど、アーリーステージからふんだんにお金を使ってインフラを構築している会社があった。大手製薬企業からやってきた人たちが以前の会社と同様にセットアップしていたので、最新鋭の設備とか導入して、すごく洗練されたラボを作っていた。その時はすごいなあと思ってただ見とれていたんだけど、結局その会社はその後2年もしないうちにクローズしてしまった」

K「ベンチャーは質素に、ということでしょうか」

A「その会社がそのせいだけのためにつぶれたのかどうかはわからないし、お金は必要なことにはもちろん使わなければならない。大事なことは本当に必要なものと、当面なくても何とかなるものの見極めだと思う。大企業に比べると相当不便な環境で何年かやってみて実感するのは、普通の製薬会社のラボなら当然あるようなものがなくても、意外と何とかなるということ。研究者は基本的にあれもこれも欲しがるし、これがあればもっと生産性が上がるとか言うけどね。まあそれはそれで嘘ではないのがまた難しいところかも知れない。ビジネスサイドの人にとってもひとつひとつが本当に必要なのか判断するのは難しいけれど、そこをどうやって見極めていくか。そのあたりを全体的にうまくバランスしながら設備投資などをしていくことが、最少の投資で最大の成果を得る重要なポイントのような気がするね」

K「大学だとひと通りのものはありますし、大物はデパートメントの予算で買うのであまり不自由を感じることはありませんね。でも恐ろしく古い機械でも修理して使ってますよ

A「そういえば会社でも中古品を買うことはあるよ。ところで日常の研究費という点ではどうなの?」

K 教授が取ってくるグラントに加えて、ポスドクはフェローシップを取る人が多いです。 企業や私立の財団から研究費を得る場合もあります。人件費が含まれるのでグラントなどが枯渇してくると、スタッフをカットせざるを得ない状況になったりもしますが」

A「そのあたりはちょっと民間企業のレイオフ(解雇)と似ているかも」

K「それほど頻度高くはないですけどね」

A「企業でもNIHなどのグラントは取れたら取れただけ使うけれど、ベンチャーキャピタルからの資金の場合、節約したお金は銀行にセーブしておける。そういう意味からも当然無駄使いは慎まなければならないけど、アカデミアのグラントはどうなるの?」

Kグラントの年限を超えてセーブはできないので、複数のグラントを使い分けているようです

A「そのへんはちょっと違うところかも知れないね。ということで今回はこのへんで」

K「あれ、今回はオチなしですか?」

A「まぁねー」

K「聞くんじゃなかった・・・」

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