楽しいことばかりでは・・・ (4/25/2004)

 

 こういったコラムでは、つい何となくよさそうなことばかり書いてしまいがちだ。シリコンバレーはいいところだ、楽しいことが多い、日本人だって十分やっていける、そして自分は充実しています、だからみんなもっと出て来ましょうよ。総論的にはそう思っているのも嘘ではないのだが、だからといってポジティブな面ばかり強調するのは、自分自身でもちょっと胡散臭いものがある。人生そんなに楽しいことばかりのはずはないのだから。

 私にとって一番つらいのは、なんと言っても英語が不自由なことだ。少しずつ進歩はしてはいると思うけれど、第一言語である日本語と比べたときのギャップは埋まりようもない。その不自由な言語で日々の仕事をし、生活をしていくというのは、当たり前だがやはり厳しいものがある。例えばメールならじっくり時間をかけて読んだり書いたりすることも可能だが、日々の仕事は基本的にface to faceである。リアルタイムのディスカッションでは、正直言って思っていることの半分も言えなくて悔しい思いをすることも多い。とは言っても私の場合は研究職なので、議論はもちろん大事だが、もっと大事なのは実験により重要なデータを出すことである。そして自分の仕事の成果はデータが語ってくれる。そういう意味では英語の壁が低い部類の仕事であるし、だからこそやれているとも言える。

従って、現状維持をしていくだけならば実は大きな問題はない。私の仕事であるmedicinal chemistryというのは、ある意味で職人技である。経験を積めば積むほど熟練していく仕事である。関連領域の専門用語さえカバーしていれば、例え自分の頭の中が日本語でも何とかなる。ただ今後の人生設計を考えた時には、もともとそれだけで満足する気はなかったし、いろいろやりたいこともある。しかしアメリカ在住がトータルで4年近くなってきて、英語に関して少々焦りを感じる今日この頃なのである。こんな調子で本当にやりたいことができるのだろうか、という不安が頭をもたげてくる。当初は3年くらいたてばそれほど不自由しなくなるのではないか、という予想をしていた。そして実際に3年が過ぎた今、その予想がかなり楽観的だったということがわかってきたことゆえの焦りである。

もちろん焦っても何も始まらないので、とにかく日々努力していくしかない。ただもしかしたら、傍目にはうまく楽しくやっているように見えても、実際にはもちろんそれなりに不安や焦りがあるということだ。しかしながらあちこちで書いているように、それでも結局は気持ちを前向きにしてくれるのがシリコンバレーでもあるのだけれど。

 

 

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